2020年に東京でオリンピックが開催されることが決まった時、
開催までの7年間で、
英語を話せるようになる日本人が劇的に増えるのではないかと思った。
学校で英語を学び始める中学1年生が成人するまでの期間があれば、
オリンピック会場で通訳ボランティアを務められるほどの英語力を
身につけることは難しくない。
そうなると、私たちのようなアメリカを拠点にしている
日本人コーディネーターは10年先にはお払い箱になるのだろうか。
FEEAはちょうど設立したばかりであったが、
別の事業展開のことも考えておいたほうがいいだろうか、
と頭をよぎったものだ。
かくて4年が経過。
観光事業の拡大とともに、JRの窓口の方々や全国のツアーガイドの方たちの
英語力は以前に比べ格段に上がっていることがわかる。
中には英語だけでなく、
中国語や韓国語など数カ国語をマスターしている人たちもいる。
それにしても、話せる人が珍しくなくなってきたというだけで、
英語圏以外から来ている他国の人々に比べると、
やはり日本人はまだ英語を話さない国民だ。
インターネットでは世界中の情報を見ることができるが、
英語で情報を入手している日本人は少ないだろう。
ウェブサイトの翻訳も数年前まではひどいものが多かったが、
今では多くのニュースや情報が、
かなり速く違和感なく日本語に訳されている。
そうして我が社にリサーチの依頼が来る際、
以前はアイデアの段階で引き渡されていたが、
最近では初期段階のリサーチが日本国内で行われ、
それを基に取材交渉を依頼されることが多くなっている。
ところがこれがかなりトリッキー(落とし穴がいっぱい)なのだ。
初期段階のリサーチを鵜呑みにして、
ハイハイとばかりに交渉を始めてしまっては
大変なことが起こるケースが考え得る。
というのは、残念ながら日本で得られるそういった情報は、
個人発信の偏ったものや、
英語の解釈が中途半端のままのものも多く含まれており、
現地の法律や文化、常識といったものを抵触していることがある。
「TVで紹介させてもらえるよう交渉してください」と
依頼された情報が違法行為に関するものであったり、
詐欺まがいの商法を紹介しているものであったり、
米社会では差別的な意味合いになったり道徳的に疑問を呈するもので
あったりすることがある。
英語が話せたり読めたり翻訳できたりしても、
そういったことは現地で暮らしていなければわからないことが多い。
我が社が提供できることは、実は英語力以上に、
そういったアドバイスの部分にこそ存在価値を発揮できるのかもしれないと
思う今日この頃だ。
別事業のことは先回しにして、
2018年も、TV業界で面白い番組作りに貢献していきたい。
制作本部 北米担当執行役員
The Far Eastern Entertainment America, Inc.(FEEA) COO 石橋朋子